【週刊銀高さん「九尾×蛟」】「ジャンプ」



鬱蒼とした山奥。誰も足を踏み入れなくなって一体どれほどの時間がたっただろう。
姿を見せるは野山を縄張りにしている動物のみ。

そして、人外。

真っ白な狐は重たげな九本の尻尾を自在に動かしつつ、沼の辺で人里から取ってきた書物を開く。

【ジャンプ】
こんな面白い物がこの世にあるなんて。

九尾の狐はニヤリと笑った。


「なぁに、笑ってやがんだ?」


突然沼の中央から声がした。
この沼の主、蛟だった。

蛟は女のような着物を纏い、煙管を吹かしていた。煙管から出る煙は美しい紫で、蛟の妖しい雰囲気にとても似合っていた。


「別に、おかしくなんかないんだからね!」

九尾は作り声でそう言った。


「??」

蛟は訝し気に九尾を見つめると、口から輪っかの煙を吐いた。


「知らねぇの、ツンデレっていうんだよ」

九尾は本から目を離さないまま、そう言い放った。


「知らねぇよ、お前そんなもん自分の巣で読みやがれ。
 わざわざこんな湿気の多い所で読まなくてもいいだろ。湿気るぞ」

「判ってねぇなぁ」


九尾の言葉にますますよく判らないという顔をして蛟は水に浮かぶ蓮の葉をはじいた。
蓮の表面で玉となっていた水滴は飛び散り、また元の沼の水となる。


お互い長い間ずっと一人だったからか、お互いの気持ちを量りかねていた。


でも、一つだけ二人には変化があった。


九尾はよく沼の辺で読書をするようになったし、蛟は以前よりずっと水面に出ている時間が長くなったということだ。


【終わり】
ヒトコト(2017/06/24)
Twitterの「週刊銀高」さんの2017年5月28日のお題「九尾×蛟」。
九×蛟小説は初めて書きました。もっと昔話風にしたかったけど、難しくて断念しました…。

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