【週刊銀高さん「坂田銀八×高杉晋助(3Z)」】




『国語準備室』

 プレートにはそう書いてあるが、殆ど使われる事がない。今は溢れかえった教材等が所狭しと置いてあるだけ。

 高杉晋助が引き戸を開けると、古紙と煙草の香りと埃の匂いがつんと鼻につく。色々に匂いが混ざって臭い部屋。
それでもここに足を運んでしまうのは、端的に云えば人が来ないからだ。

 そこには、探していた人物がいた。

 いや、探していたというのは正確ではない。たまたま、気が向いてここに来るといつもいるというだけ。


 坂田銀八は、安っぽい折り畳みの机の上に、本やら紙の山に埋もれるように突っ伏していた。
仕事でもしているのかと思って高杉は覗き込んでみる。今週号のジャンプが置いてあった。ジャンプの上には眼鏡と煙草が乗っている。
どうやら仕事してる体を装ってジャンプを読んでいたようだ。

 仕事じゃないのならと、高杉は銀八の向かい側に、これまた安っぽい折り畳みのパイプ椅子を引き摺って置いて、ドカリと座った。
起きない。これだけ物音をたててるのに、銀八は起きる気配もない。

 白いなと思って銀八の頭部を暫し眺める。
ブラインドが半分だけ下りた窓から射す夕日で、ほんのりオレンジがかる。
そう言えば、部屋の中もオレンジに染まっていて何もかも一層古ぼけて見えた。


 眩しい。


 そう思って高杉は目を閉じた。瞼の裏も鮮やかな朱だった。
かつて生きていた世界ではこの眩しさは感じなかった気がした。この世界だからこその眩しさ。

 目を閉じたまま耳を澄ますと、規則正しい寝息が聞こえた。
薄らと目を開けてみると、寝息に合わせて銀八の身体が上下するのが見える。
 いつも着ている白衣はパイプ椅子の背に掛けられており、銀八はワイシャツを腕まくりしていた。
いつもはあまり見えない腕を見つめる。筋と血管が浮いて、動いている。


 生きてるな、当たり前だけど。


 銀八は…銀時よりも、細い気がした。全体的にも少し痩せている。
今の時代にあった背格好なんだろうかと思いながら自分の腕と比べてみると、自分よりは明らかに太くたくましい。大人と子供も差もあるからなと、自分を納得させる。

 自分の身体も今の時代に適応している。頭の中にある自分の姿と、今の自分の姿が合わない。
苛立ちの原因はそれなんだろうか。


「あのさ、観察しないでくんない」


   銀八の手が、眼鏡眼鏡と彷徨う。目当てのものを掴んで、かけた。


 真正面で目が合う。銀八は少し口の端を持ちあげた。


「何か新しい発見でもあったか?」


   表情も話し方も、銀時とは少し違う男。明らかに時代に合った生き方をする男。
それが憎らしい反面、唯一変わらない銀時の姿なのかもしれない。


   ジャンプの上の煙草を手に取って眺め、一本抜きとって口に咥える。

「火」

 銀八に顔を近づける。


「ここ禁煙なんですけど」

 嘘つけとばかりに、机の端に置いてあるアルミの灰皿を顎で指してみる。


「禁煙はマジなんだって」

 銀八は背凭れに寄りかかって体を揺すって笑う。
同級生はしない、大人の男の表情に見入っていると、銀八もぐぐっとこちらに顔を寄せてきて煙草を奪った。


   鼻と鼻があたる。


 次は銀八が顔の角度を少しかえて、軽く唇と唇がふれた。



 顔が近すぎて、銀八の表情なんかよく見えない。
相手もきっとそうなんだろうけど、表情を変えないようにした。そうしないと、全てぶちまけてしまいそうだった。


 唇が少し離れて銀八の吐息が触れる。


「火、いる?」


 銀八の表情は近すぎて見えない。


【終わり】
ヒトコト(2017/08/26)
Twitterの「週刊銀高」さんの2017年08月05日のお題「坂田銀八×高杉晋助(3Z)」。
またもや転生前提の八高となってしまいました。なんか、お互い記憶持ちだけど、言わないっていうやりとりだけが延々と書きたい。

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